べっちょない日々

作家の末席を汚しつつ、しぶとく居座る浅田靖丸のブログ

「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」鑑賞


シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」
監督ガイ・リッチー 出演ロバート・ダウニーJr ジュード・ロウ ノオミ・ラパス など

 あらすじ
 ヨーロッパの各地で連続爆破事件が発生。調査に乗り出したホームズ(ロバート・ダウニーJr)は、結婚式を翌日に控えたワトソン(ジュード・ロウ)を引き連れてとある社交場へと向かい、そこで事件の鍵を握る女性、占い師のシム(ノオミ・ラパス)と出会う。事件の黒幕がモリアーティ教授であることを掴んだホームズは、彼がホームズへの警告としてワトソンの命を狙っていると知り、新婚旅行に出かけようとしているワトソンを追って汽車に乗り込む。間一髪でワトソンを助けたホームズは、そのままワトソンとモリアーティを追う。そのころモリアーティは、さらに恐ろしい計画を立てていた。果たして、ホームズはその計画を阻止することができるのか。

 感想
 先日、妹が友人の結婚式に出席するので会場の姫路まで送って欲しいというので、送ってきた。
 逆らえない兄である。
 ちなみに妹は、私を「兄貴」とも「お兄ちゃん」とも呼ばず、ただ「兄」と呼ぶ。
 尊称を付けるほど偉くないから、というのが彼女の言い分だが、もっともである、と納得してしまう私が悔しい。
 とまれ、せっかく姫路にきたのでこのまま帰るのも惜しいと、映画を観ることにする。
シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」である。
 ホームズとワトソンの役は、前回に引き続きロバート・ダウニーJrとジュード・ロウのふたりである。前回観たときも思ったことだが、ワトソン役のジュード・ロウがかっこよすぎる。ロバート・ダウニーJrの完敗である。
 しかしこのロバート・ダウニーJrは、原作のホームズにかなり近いように見受けられる。
 原作のホームズは、決して二枚目で都会的な紳士ではない。むしろ、大麻の常習者で奇行の目立つ、いわゆる変人である。そしてロバート・ダウニーJrは、そんなホームズの変人さ加減をとてもうまく表現している。
 テンポが速く、二転三転とどんどん展開していくストーリーには、思わず引き込まれる。
 面白い。が、推理物ではないような気がする。
 序盤早々に黒幕がモリアーティ教授であることが判明するし、彼の計画を暴くホームズの推理も、すんなりと当たりすぎる。なので、これは推理物というよりも、冒険活劇として観た方が良いだろう。そして、たとえ冒険活劇であったとしても、その魅力がまったく損なわれないのが、この映画のすごいところであるように思う。

 いろいろと書きたいことはあるのだが、どれもネタバレになってしまいそうな気がして二の足を踏む。
 ていうか、ここでネタバレしてもどこにも影響しないだろうし、いいか?
 思い切って書いちゃうか?

 ということで、ちょっとだけ。
 今作のサブタイトルである「シャドウゲーム」という言葉には、ふたつの意味がある。
 ひとつは、世間には公表されることのない、世界の裏側で行われる戦い、という意味。
 そしてもうひとつは、相手が次にどう動くかを瞬時に読み取り、常に先手を取ろうとして牽制し合う、脳内での手の内の読み合いの戦いという意味である。
 今作においてホームズは、この「敵の出方の二手先、三手先を完璧に読む」という、一種の予見能力とでも呼ぶべき力の持ち主として描かれている。そして、この予見能力が発現されているときの描写が、とてもいい。かっこいい。今までありそうでなかったような映像なのである。

 しかし、このシリーズは今作で早くも、ホームズという名探偵がひとりいるだけでは太刀打ちできない事態にまで犯罪の規模が拡大してしまった。もうこれからは、ある意味平和的で優雅ですらある、閉ざされた世界での「犯人との知恵比べ」には戻れない。
 そのことを、おそらくホームズはその予見能力で、誰よりも正確に見抜いているだろう。
 だが、ホームズは決して諦めない。
 なぜなら、諦めないというそのことこそが、名探偵の資質であり宿命だからである。

 と、かっこよく締めてみようとしましたがどうでしょうか。
 やっぱり失敗ですか。
 かっこつけるのは諦めます。