第二回うどんツアー&本広作品聖地巡礼の旅 その一
お盆も終わろうかという、今月の17、18日に、「第二回うどんツアー&本広作品聖地巡礼の旅」として、四国を再訪した。
メンバーは相変わらず、私とK夫妻の三人である。
前回が去年の晦日から大晦日にかけてで、今回がお盆という、慌ただしい時期ばかりの開催になっているが、それには理由がある。
K夫人の徳島の実家への帰省に合わせているからである。
今回は、先に帰省されているK夫人と四国で落ち合い、翌日、同窓会に出席するというK氏を琴平町で下ろして帰る、というスケジュールである。
17日の朝7時半ごろに、四国へ向かって出発。
暑い。
渋滞もなく順調に四国に到着、K夫人と合流し、そのまま一軒目のうどん屋「谷川米穀店」へ。
映画「UDON」にも出てきた店である。
11時開店と聞いていたのだが、到着した10時半ごろにはすでに開いており、長蛇の列ができている。仕方なくその列に並び、順番を待つ。暑い。一軒目からくじけそうである。
何とか店に入り、うどんを注文。釜揚げの小。お好みで醤油や酢などをかけて食べる。
うまい。
ちゅるっちゅるで、もっちもちである。
並んでまで食べた甲斐があった。ただ、麺自体にかなり塩気があるので、醤油のかけすぎに注意である。
その勢いで、二軒目の「池上製麺所」へ向かう。言わずと知れた、るみばあちゃんの店である。
この店も「UDON」に登場している。もっとも、現在店舗は移転しており、映画に収められている店はもうない。
観光バスが何台も止まれる広い駐車場がある、規模の大きなうどん屋になっていた。
池上製麺所 駐車場も広いが店舗も広い
完全に観光客狙いじゃん、大丈夫か? と少々不安になりつつ、ここでも釜揚げを注文。ちくわ天とともに食す。
うまい。
こちらの勝手な不安を嘲笑うかのようなクオリティ。
ちなみにこの店は、加西市にある「がいなうどん」の店長が修行された店である。
しかし、別の系統かと思うほどうどんの質が違う。やはり土地が変わると味も変わるのだろうか。「がいなうどん」には、師匠の味を思い出し、原点に回帰していただきたいものである。
食べ終わって車に戻ろうとしたとき、駐車場の隅にあるお土産コーナーのベンチに、ちいさなおばあちゃんがちょこんと座っておられるのを発見。その方こそ、伝説のるみばあちゃんであった。るみばあちゃんはにこにこ笑って、私たちに頭を下げてこられた。品の良さそうな、優しそうな方だった。しかし、この真夏の暑い中、店外にいて大丈夫なんだろうか?
立て続けに二杯のうどんを食べ、腹を満たした我々は、そこから30分ほどかけて、ことでんの井戸駅へと向かった。ここは映画「曲がれ! スプーン」で、長澤まさみが四国を旅立つラストシーンに使われた駅である。のどかな田舎の中にぽつんとある小さな駅は、とても愛らしく、かわいい。
長澤まさみが座ったであろうベンチがあり、思わず頬ずりしそうになったが、よく見ると、かなり汚れたクッション? いや布鞄? が敷いてあり、さすがの私もちょっと遠慮した。
しかし暑い。暑すぎてじっとしていられない。我々は、写真を撮ると早々に駅をあとにした。
井戸駅を離れ、我々はまた30分かけて高松空港へと向かった。
高松空港は、るみばあちゃんの池上製麺所のほど近くにある。つまり我々は一時間以上かけて行って戻ってきたのである。それなら、まず空港に寄ってから井戸駅に行けばよさそうなものだが、案内役のK氏も、すでに暑さで何も考えられない状態だったのであろうと推察される。
高松空港は、高松の町並みが一望できる高台にある。しかし我々には、景色を楽しむ余裕はすでにない。足早に港内へ向かい、涼む。さすがは高松、小さな空港内に、うどん屋さんが二軒もある。しかし残念ながら腹が減っておらず、立ち寄らないことにする。
高松空港 何故か上海と繋がる国際線もある(現在は休止中のようである)
高松空港を見学したあと、我々は栗林公園へと向かった。
何故このくそ暑いときによりにもよってくそ広い栗林公園に行かねばならないのか、今となっては理解に苦しむが、このときの我々は、暑さによってすでに正常な判断力を失っていたのだろうと思われる。
栗林公園に到着。
暑い。
なんと、ひとり四百円の入園料が必要だった。
何故お金を払ってまで苦行めいたことをせねばならないのか、今となって理解に苦しむが、このときの我々は、暑さによってすでに正常な判断力を失っていたのだろうと思われるのであるから、おとなしく支払って入園してしまうのである。
案内図を見ると、オススメの散策コースとして一時間もかかる道が記されている。
バカか、バカなのか、誰がこのくそ暑い中一時間も屋外を歩き回るのだ? と力なく反論しつつ、そのコースに沿って歩く。何故そんなことをするのか、今となっては理解に苦しむが、このときの我々は、暑さによってすでに正常な判断力を……ってそれももういい。
商工奨励館なる建物の玄関先に置かれていた、ほーこさん(おそらく奉公さん)という人形、でかいし怖い
ふらふらになりながら、日陰の道を選んで園内を巡る。
もう全身汗だくである。
ジーパンが汗を吸って重たくなり、Tシャツもべっとりと肌に張りつく。
今年の夏、もっとも汗をかいたときであった。
しかしこの栗林公園、前回訪れた中津万象園とは比べものにならないほどの規模の大きい庭園であった。そして、このくそ暑い時期にも、結構な数の人が訪れていた。驚きである。
へろへろのぼろぼろになりつつ栗林公園の散策を終えた我々は、三軒目のうどん屋「さか枝」へ足を運んだ。
閉店間際だったらしい。
かけうどんを食べ、早々に店をあとにする。
ここは先の二軒と違い、讃岐うどんとらしくコシの強い、王道のうどんだった。
この時点で、まだ4時前。
そこで我々は、次に屋島へ向かうことに決めた。
屋島は、古くは源平合戦の舞台のひとつにもなった場所であり、瀬戸内海を望む絶景ポイントでもあるらしい。
しかし、そこへ向かう途次、問題が発生した。
なんと、屋島へ行くには、屋島ドライブウェイという有料道路を使わなければならないのだった。
「ちっ! なにがドライブウェイだ! しゃらくせえ! なんでもかんでも金を取ろうとしやがってこの拝金主義者どもが!」私は何故か激昂し、(暑さにやられてイライラしていたのである)料金所の手前でUターンした。そして当てつけとして、その近くにあった「屋島神社」なる神社に立ち寄った。当てつけになっているのか?
屋島神社
屋島神社は、讃岐東照宮とも呼ばれているらしく、徳川家康を勧請した神社であるらしい。
だらだらと長い階段を上り、ようやく着いたかと思うと、そこはまだ途中で、社務所のある広場の奥に、またやたら急勾配な階段がある。おそらく、社殿をなかなか見せないことで威厳をもたらそうとしているのだろうが、その見え見えの演出がしゃらくさい。階段脇に「皇族下乗」という看板があるのをK氏が発見する。彼が調べたところによると、ここからはたとえ皇族であっても馬や乗り物から下りて参拝せよ、という意味らしい。しゃらくさい。
そしてその先に建つ社殿も、ぐるりと塀が設けられており、本殿どころか拝殿すら見ることができなくなっていた。どこまでもしゃらくさい。なにをもったいぶっているのか、と憤慨する。ちょうど小銭が一円しかなかったこともあって、私はその一円だけを賽銭箱に放り投げ、「てめーのようなしゃらくさいやつに頼むことなどなにもない!」と啖呵を切って神社をあとにした。
今にして思うと、何故そんなに怒っていたのか分からない。
ただ、歴史の浅い神社は、はったりをかますだけも大変なのだ、ということなのだが。
それから我々は、暑さで失った水分と、うどんで過剰に摂取した塩分とによって衰弱した胃を、胃薬で慰めつつ、四軒目の「小縣家」へ向かった。
ここのしょうゆうどんは、自分で大根をすって入れるという変わったスタイルが売りである。
座敷の席に座りしょうゆうどんを注文。大根とおろし器が渡される。それをK夫妻にすってもらい、(自分でする気は毛頭ない)おでんを頬張りつつうどんを待つ。そして出てきたうどんに大根を山盛りかけ、食す。
うまし。ただ、夏大根は辛い。いくら好きなだけ入れてもいいといっても、分量には注意が必要である。
小縣家を出る。さすがにうどんで腹がぱんぱんである。
そろそろホテルにチェックインの時間だったのだが、その前に「曲がれ! スプーン」のロケ地のひとつ、へっちゃら男の住んでいたアパートを見に行く。
もの凄く古い建物である。壁は灰色に汚れて所々ひび割れ、トタンのひさしはボロボロに錆びて穴が空いている。よくこんな建物の中で撮影ができたな、と思うが、ひょっとしたら室内の撮影はまた別の部屋でしたのかも知れない。
右手前のアパートがへっちゃら男の住居、左奥の橋を、旅行鞄を引きずりながら長澤まさみが歩いた
ここで一旦チェックインを済ませ、改めて夕食に向かうことになるのだが、これよりは「その二」へ。