「推理作家ポー 最期の5日間」鑑賞
「推理作家ポー 最期の5日間」
監督 ジェイムズ・マクティーグ
出演 ジョン・キューザック ルーク・エヴァンズ アリス・イヴ など
あらすじ
1849年のアメリカはボルティモアで、とある母娘が殺される事件が発生する。
現場に急行したエメット・フィールズ刑事(ルーク・エヴァンス)は、その母娘の殺害方法や密室に見せかけるトリックが、エドガー・アラン・ポー(ジョン・キューザック)の著した小説のひとつと酷似することに気付く。
任意同行を求められ、警察署に連行されるポー。しかしその取調中、第二の殺人が発覚する。
その事件も、ポーの小説を真似たものだった。被害者は、かつてポーの作品を酷評した書評家で、現場には「仮面舞踏会に死が訪れる」というメモが残されていた。
仮面舞踏会、それは、ポーの婚約者であり大富豪の娘であるエミリー・ハミルトン(アリス・イヴ)の誕生パーティのことだった。その席上、予告通りにエミリーが誘拐されるという事件が起きる。
犯人の要求は、この一連の事件を、ポー自身に小説として書かせ、それを新聞に連載させろというものだった。
そして第三、第四と事件は続き、ポーはフィールズ刑事とともに犯人を追いつつ、その過程を作品として発表する。
果たして犯人は誰なのか? そしてその目的は?
感想
久々の映画部の部活動である。
しかしこの日も、映画館に向かう途中で「腹が減った」とラーメン屋に寄ったりしてしまったせいで、上映時間に間に合わず、冒頭の数分を見逃してしまった。
我々のこの計画性のなさは、果たして治らないのだろうか。
とまれ、今回観た映画は「推理作家ポー 最期の5日間」である。
R15指定の作品だが、観てみるとその理由が分かる。
殺人現場や死体の描写が、やたらえげつないのである。
たとえば、第二の殺人事件(何故第一の事件でなく第二の事件を取り上げるのかといえば、遅刻して第一のシーンが観られなかったからである)では、振り子の先に据えられた巨大なギロチンが、台に寝かされた被害者の腹部を、ゆーらゆーらと揺れながら少しずつ切り裂いていき、被害者は生きながらにして胴体を真っ二つにされて殺されるのだが、そのシーンが、これでもかというくらいしつこく、延々と描写されるのである。
他にも、次々と発見される遺体のディテールや、攫われて閉じ込められたエミリーのパニックの描写などが、生々しくも痛々しく、執拗に描かれる。
なので、この作品は、推理物というより、サスペンス物と分類すべきであろう。
ストーリーも、推理物には必須などんでん返しがあるわけでもなく、ただひたすら、犯人の残した手がかりを追い続けて真相に至るというシンプルなものである。
そう書くと、いかにも退屈そうな作品であるようだが、そうではない。
十九世紀のアメリカの、猥雑で、不潔で、混沌としたひとびとの営みや街の風景が、見事に描き出されている作品でもある。
十九世紀のアメリカには行ったことがないので、本当のところは分からないが、しかし十九世紀のアメリカは、おそらくそんな雑然とした雰囲気だったのだろうなと思わせる。
そんな十九世紀のアメリカの町並みと、凄惨な殺人事件が重なり合い、重々しくもどこか美しい、幻想的な映像が生み出されている。
ポーの事件より、十九世紀のアメリカを描き出すことこそが主眼だったのではないかとも思われる。
また十九世紀のアメリカは……って十九世紀のアメリカ十九世紀のアメリカしつこいよ。
自分でも自分の頭がおかしくなったのかと不安になるし、第一読みづらいわ。
ちなみにこの作品の原題は「The Raven」(「大鴉」の意)となっており、それは、ポーの詩から引用されたものであるらしい。
確かにそのままでは分かりにくいが、しかしだからといって、「推理作家ポー 最期の5日間」では、かえって分かりやすすぎるような気もすると思ったり思わなかったりする今日この頃のような感じかも知れない。
もうちょっとこう、日本人にも分かりやすくて、でもどこか謎めいていて、しかも魅力的なタイトルは付けられないものだろうか。
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私にはまったく思いつかないが。
とまれ、CGはなにも、非現実的な描写を作り出すためだけの技術ではないということを、この作品では再認識させられた。
十九世紀のアメリカ(また出た)の世界観を醸し出すため、あるいは凄惨な死体にこの上ないリアリティを付与するために、最新のCG技術が、おしげもなく、かつさりげなく駆使されているように見受けられるのである。
発砲された銃弾が飛来する映像など、ところどころやりすぎな場面もあるにはあったが、それだってきっと、「馬鹿野郎、俺達だってちゃんとCGを使っているんだぞ」という制作側のアピールなのかも知れない。そうじゃないかも知れない。
そもそも、誰に対するアピールなのか、誰に馬鹿野郎と言っているのか、現実は分からないことばかりである。(私が勝手に分からなくしているだけなのである)
残酷なシーンが多く、正直目を背けたくなったり、耳を塞ぎたくなったりすることも多かったのだが、そういうことも含めて、なかなか楽しめた作品だった。