べっちょない日々

作家の末席を汚しつつ、しぶとく居座る浅田靖丸のブログ

フォルクスガーデンでのライブ


 去る12月16日。
 黒田庄のフォルクスガーデンにてパーティが催され、そこでライブを演ったのである。
 私はてっきり、クリスマスパーティとばかり思っていたのだが、主催者のミス・リリー(仮名)に聞いたところ、どうやらそういうことでもなかったらしい。ではどのような名目のパーティかと訊けば、フォルクスガーデンのリニューアル記念のような、日頃のお客様への感謝のような、とにかくみんなに楽しんでもらえればいいじゃん的なパーティだという。
 しかしそのわりに、会場の飾り付けやプレゼント交換といったイベントは、完全にクリスマスムードである。
 よく分からない。
 そのよく分からないパーティに、三十名を超える人々が集まっていた。
 本当によく分からない。

 そんな中、今回は我々も、いつもと勝手が違っていた。
 まず違ったのは、バンドメンバーである。
 私とK氏といういつものふたりに、今回はK夫人にも参加してもらったのだ。
 女性が加わると、音の幅も広がるし、ピッと引き締まる。
 メインの曲をいくつか歌ってもらい、それ以外にもコーラスやパーカッションをしていただいたのだが、やはり男だけでの演奏とはずいぶん違う。華やかである。

 そしてもうひとつ違っていたのは、音響である。
 今までは、アコースティックを気取って、生音をマイクで拾う、というパターンで演奏していたのだが、今回はそうせず、ラインを通しての演奏という手法を採った。
 何故その手法にしたかといえば音のコントロールを自分たちでするためである。
 本当なら音響機材のセッティング(PAという)は、それ専門の人に来てもらって、任せるのが一番いいのだが、何せ我々にはそんな金銭的余裕はない。というより、お前ら程度の演奏で、なんでPAが必要なのだ? 調子に乗ってんじゃねえぞ。と思われるのが怖い。恥ずかしい。穴があったら入りたい。なくても入りたい。というような気持ちになってしまうので、極力自分たちでしたいのである。
 自分たちでPAをするために、K氏は何やらごついエフェクターを買い、私はマイクとアンプを買った。よく分からない出費である。そんな金があるならPAを雇えばいいじゃんとも思うが、そのPAが怖いのだから仕方ない。それに、PAには毎回お金がかかるけど、アンプとマイクは、一度買えばそれで済むしな。こっちの方が断然お得だ。そうに違いない。誰かそうだと言ってくれ。
 ちなみにアンプはROLANDのCUBE STREETというもので、これはマイクとギターの音を一台で出せ、しかも電池でも駆動するというスグレモノである。
 これさえあれば、電源の取れない路上でのライブでも大丈夫だぜ! ガンガン弾くぜ! まあ路上ライブなんてぜってーしねーけどな! という、何やらよく分からない反抗的な気分になれる逸品なのである。

 そして当日、我々はパーティが始まる2、3時間前に会場入りし、ごそごそとPAのセッティングをして、本番を待った。
 当初の話では、パーティの開催中ずっとBGM的に演奏していて欲しいとのことだったので、それは我々だけでは到底ムリ、ということで、ピアノの調律師で「おもちゃ箱」というリコーダーグループを組んで活動されているO氏をお招きし、交代で演奏しましょうという段取りになっていた。
 そのO氏が、パーカッションのK氏とふたりでクリスマスソングを演奏し、まずお客さんを出迎える。
 お客さんはどんどん集まり、テーブルにはおいしそうな料理が並び、キャンドルが灯される。
 O氏のリコーダーが否応なく場をゆったりと暖かく包み、何ともほんわかとした気持ちいい雰囲気になる。
 というより、完全にクリスマスパーティである。
 もう、クリスマスパーティということにすりゃいいじゃん、と思う。
 そしていよいよパーティが始まり、ビンゴ形式でのプレゼント交換のあと、我々の出番である。
 こっそり持ち込んだ酒を飲みつつ、何曲か披露。
 そのあと、再びO氏に交代し、リコーダーでのバロック音楽を堪能したあと、もう一度我々が演奏する。

 まあ、なんかいろいろ失敗しちゃった。
  
 しかし楽しかったので万事OKである。 

 我々の演奏のあと、主催者のミス・リリーがピアノで何曲か演奏され、それに触発された男性客が飛び入りでピアノを弾かれたのだが、このときが一番盛り上がった。拍手と笑いが飛び交い、会場の温度がぐっと上がった。みなさんとても幸せそうで、心地よいパーティだった。そして結果我々は前座だった。ただの露払いであった。
 まあいいさ、明日は明日の風が吹くのさ。
 吹かないかも知れないし、吹いても逆風かもだけど。
 俺たち前座はクールに去るぜ、と行きたいところだったのだが、酒を飲んでいたため自力では帰れず、代行を呼ぼうにもどこも忙しくて捕まらず、結局、ミス・リリーと、お客さんとしてきていたH氏に送ってもらうことになってしまった。迷惑な前座である。
 ミス・リリー氏とH氏には、この場をお借りしてお礼申し上げたい。
 その節はご迷惑をおかけしました。ありがとうございました。

 ということで、何だかよく分からなかったパーティは、しかしとても盛り上がった、幸福なパーティになった。また何かあれば、是非声をかけていただきたく存じます。

 ちなみに、何か写真の一枚でも貼ろうかと思っていたのだが、バンドメンバーは誰も写真を撮っていない。それどころか、誰ひとりカメラすら持っていっていなかった。
 なので、どなたか、このブログに載せてもいいよという方、写真を譲っていただけないでしょうか? よろしくお願いいたします。