バタフライエフェクト
トイレに行こうと席を立ったとき、机の角で腰を打ち、あまりの痛みにうずくまる。
同時に机が震動し、その上にうずたかく積み上がっていた本が崩れる。
卓上にて使用していた小型の加湿器が、崩れる本に当たって床に落ち、床が水浸しになる。
もうなんだよ、ぶつぶつ小言を言いながらぞうきんで床を拭き、ついでに加湿器を掃除し、本を棚に直そうとしたところで腰がずきりと悲鳴を上げて再びうずくまる。
大いなる負の連鎖とエントロピーの増大。
そして「風が吹けば桶屋が儲かる」的予測不可能な未来。
カオス理論でいうバタフライエフェクトとは、まさしくこのことである。
この狭い一室で、科学理論の正しさが思わぬ形で実証され、胸が打ち震える。というより腰の痛さで震える。
そして尿意を思い出し、トイレで感慨にふける冬の夜である。