べっちょない日々

作家の末席を汚しつつ、しぶとく居座る浅田靖丸のブログ

正直こまった掃除機


 昨年の夏頃から、「家電が壊れる」という呪いが私にかけられているような気がするのである。
 発端は、電気シェーバーが壊れたことだった。それから電気ポットが天に召され、さらに電子レンジまで息を引き取り、ダメ押しでプリンターまでもがご逝去された。
 それから半年以上が経ち、さすがにその呪いも解かれただろうとひと安心していたのだが、呪いの効力は、まだ消えずに残っていたようだった。
 掃除機の調子がおかしくなってきたのだ。
 もともと、ノズルがホースから抜けやすかったり、本体のタイヤの滑りも悪かったりして、使う度に軽く苛立っていたのだが、先日、掃除機の取っ手、電源やパワーが調整できるスイッチの付いている辺りのプラスチックの基底部分が、ベキッと音を立てて割れ、取っ手が半分もげたような状態になった。それに加えて、使用中に何故か電源コードが勝手に巻き取られていくという現象が発生し始めた。このコード巻き取り現象、かなり強い力が働いているようで、放っておくと、本体がずるずるとコンセントの方に引きずられていくのである。
 まさに満身創痍、である。
 仕方がないので、最近は、タイヤを使わないように本体を右手で持ち、壊れた取っ手を触らないように、そしてノズルが不用意に抜けないようにその連結部分を左手で掴み、勝手に巻き取られていくコードを足で踏んで引き出しながら使っている。
 正直、自分でも何をしているのか分からない。
 掃除機をかけている、と見せかけて、何か違うことをしているような気になる。
 昔、こんな格好をしたひとをどこかで見たような気がする。
 何だったろう?
 言うことを聞かない掃除機を騙し騙し扱いながら考えて、思い出した。
 そうだ、これはあれだ、金属探知機で徳川の埋蔵金を探していたひとだ。
 金属探知のひとのシルエットに似ているのだ。
 ――そりゃ金塊を当ててくれたら嬉しいけどさあ、フローリングの床の下に埋蔵金は埋まってないだろうしなあ。
 ――それにそもそも掃除機なんだから、埋蔵金を当てる前にゴミを吸って欲しいんだけどなあ。
 ぼそぼそと愚痴りながら掃除をするのである。
 そして勝手に巻き取られるコードに足を取られ、転びそうになって慌ててバランスを立て直したところでノズルが抜け、差し込み直そうとしたところでコードが巻き取られてコンセントが外れ、そのせいで突然電源が落ちて「ぬおおおおっ!」と叫ぶことになるのである。
 何が言いたいのかと言うと、掃除機を買い換えたいのである。