べっちょない日々

作家の末席を汚しつつ、しぶとく居座る浅田靖丸のブログ

ペグが壊れたの巻


 アコースティックギターのペグが壊れたのである。
 ペグとはギターの弦を巻き取る部品のことで、壊れたのは四弦用のペグだった。
 巻き取る機構自体は無事なのだが、先端の取っ手がひび割れて抜けてしまい、うまく巻く取れなくなってしまったのである。
 これは困った。
 来る7月7日に、14時から播州織工房館にて、「今日は三人」というバンド名でライブをするというのに(ステマである)このままでは使い物にならない。(ちなみに他のメンバーは映画部と詣で部の部員でもあるK夫妻である)
 私は早速ネットでペグを探した。
 しかし、どうやらペグの取っ手だけというのは売っていないようだった。
 ペグを丸ごとごっそり交換するという手段しかなさそうなのである。
 迷った末、私は少し遠くにある大きな楽器店に車を走らせた。
 その店には、ペグは一種類しか売っていなかった。
 私はそれを買い、帰宅して、早速交換に取りかかった。
 ペグの交換のついでに、弦も新しく張り替えることにする。
 まず古い弦をすべて外す。そして四弦のペグを抜き取る。ペグは、弦を巻き取る部分を本体の前面に突き出させるため、本体に穴を開けてそこを通す形になっている。
 その穴に、新しいペグをはめ込む。
 おや? ペグが入らない。穴よりペグの口径の方が大きいのだ。
 一種類しか売っていなかったため、てっきり規格が統一されているのだとばかり思っていたのだが、どうやらそうではなかったらしい。
 うう、往復にかかった二時間と、購入費用九百何十円(意外と安い)を返せ、などとぶつぶつ言いながら、改めてネットで検索してみる。
 前回は気付かなかったが、ペグにはやたらと種類があった。
 しかし、どれが私のギターに合うペグなのか、今いち分からない。
 形や素材が微妙に違い、それによって得手不得手があるようである。
 そんなに知識があるわけではなく、実はあまりギターにこだわっているわけではない私にとって、ペグの世界は未知の領域であり、コア過ぎる話であり、ちんぷんかんぷんな世界だった。
 まったく興味が湧かず、何も頭に入ってこない。
 これは恐ろしくややこしい場所に足を踏み入れてしまったようだぞと、私は困惑しつつそっとそのサイトを閉じた。
 よくよく考えてみれば、ネットで私のギターに会うペグをどうにかして見つけたとして、通販でそれを購入する場合、注文してから届くまでに数日のタイムラグが生じるのである。
 となると、その間は練習できないということになる。
 端から練習なんぞしてないんだから別にいいじゃん、とおっしゃる方々もおられるだろうが、「練習できるのにしない」というのと「練習できない」ということとは、微妙に違うのである。
 いつでも弾ける状態だからこそ弾かないだけなのであり、弾けない状態のままでは、安心して練習をサボれないのだ。
 そこで私は、緊急手段として、壊れたペグの取っ手に瞬間接着剤を塗り、ペグに押しつけた。
 とりあえず、7月7日の本番まで保てばいいのだ。
 7月7日、14時からの、播州織工房館でのライブまで保てばそれでいい。(ステマである)
 これを読んだみなさまが、当日見に来てくれればなおのこといい。(ステマなのである)
 それ以降なら、また壊れたときに対処すればいいのである。
 そして私は、瞬間接着剤が乾くのを待ち、恐る恐る割れたペグを触った。
 もの凄く頑強にくっついていた。
 弦を巻いてみても、まったく壊れる様子はない。
 恐るべし瞬間接着剤、である。
 文明の利器ブラボーである。
 これでは、7月7日、14時からの播州織工房館でのライブ(だからステマなのだ)までどころか、半永久的に保ちそうである。
 ギターにそれほどこだわりのない私は、おそらくこのまま使い続けるであろう。
 とまれ、直ってよかった。
 7月7日、14時からの、播州織工房館でのライブ(ステマ……って、しつこいか)には、何とか出られそうである。
 あとは演奏の腕前の問題だけなのだが、それにはまったく目をつぶるのである。