べっちょない日々

作家の末席を汚しつつ、しぶとく居座る浅田靖丸のブログ

「清須会議」鑑賞


清須会議
監督 三谷幸喜  出演 役所広司 大泉洋 小日向文世 佐藤浩一 ほか

あらすじ
 天正十年。織田信長明智光秀に討たれるという事件が発生する。
 のちにいう「本能寺の変」である。
 謀反人である明智光秀は、豊臣秀吉大泉洋)らによってただちに掃討されたのだが、その後、当主を失った織田家に、信長を継ぐ跡目をどうするかという大問題が持ち上がった。
 そこで、織田家の筆頭家老である柴田勝家役所広司)は、同じく家老で盟友である丹波長秀(小日向文世)の助言により、かつての信長の居城である清洲城に家老たちを集め、話し合いによって跡目を決めることにする。
 柴田と丹波は、聡明と評判の信長の三男、信孝(板東己之助)を跡目に推挙する。
 しかし、柴田の勢力を削ぎ、織田家を牛耳ろうと目論む秀吉は、次男でうつけ者と噂される信雄(妻夫木聡)を擁立し、真っ向から対決する姿勢を見せる。
 柴田の陣営には、信長の妹であるお市さま(鈴木京香)がつき、秀吉には信長の弟である信包(伊勢谷友介)がつく。
 信孝と信雄のあまりの出来の差に、当初は柴田らの陣営の圧勝と目されていたのだが、狡猾にして大胆な秀吉の策により、情勢はきな臭さを増し、次第に混乱し始める。
 果たして、織田家の跡目は誰に決まるのか? 柴田と秀吉の勢力争いの決着はいかに?

感想
 久しぶりの映画部である。
 といっても、今回、部員は不参加である。
 誘ったのだが、仕事が忙しい、といういっちょ前の社会人のようなことを言われて断られたのである。
 まあ良い。忙しいのは良いことである。
 で、「清須会議」である。
 三谷幸喜氏の6作目の映画であり、初の時代劇である。
 うむ。
 面白い。
 といっても、前作「ステキな金縛り」のようなコメディ的な面白さではなく、ストーリー展開の面白さで見せるタイプの作品である。
 三谷氏と言えばコメディが得意というイメージが先行しがちだが、実は稀代のストーリーテラーでもあったのだということを再確認させられる、素晴らしい作品に仕上がっている。
 役者も実力派が勢揃いで、豪華のひと言である。
 すごい。
 誰も彼もがすごいが、その中でも特筆すべきはやはり、大泉洋であろう。
 あの役所広司の向こうを張って、癖のある豊臣秀吉を堂々と演じている。
 劇中「この会議は戦だ」(正確には覚えてないが)というような秀吉の台詞があるのだが、大泉洋にとっても、この映画は戦だったのではないだろうか。
 そんな彼の気迫が、ひしひしと伝わってくる。

 女性陣も豪華である。
 お市のかたを演じる鈴木京香を筆頭に、秀吉の妻に中谷美紀、そして松姫には剛力彩芽が抜擢されている。
 正直、剛力彩芽の起用は腑に落ちなかったのだが、彼女の最後のシーンを観て納得した。
 剛力彩芽、すげー不気味である。あの顔をできるのは、ある意味彼女しかいない。
 が、あの顔は、彼女の女優としてのキャリアに傷を付けるのではないかと心配にもなる。
 どんな顔か、是非観て確認して欲しい。

 他にも、三谷作品にはおなじみの、あのひとやあのひとらもゲスト出演している。
 そういうひとたちを見付けるのも楽しみのひとつである。
 戸田恵子が出てなかったよなあ、三谷作品の常連なのになあ、と思っていたのだが、エンドロールで彼女の名前がしっかりクレジットされていた。
 見逃してしまったのだ。
 悔しい。
 ナカ、という名の人物で出ていたようなのだが、そもそもそのナカなる人物に心当たりがない。
 どこに出ていたんだ戸田恵子
 どなたかご存知の方は教えてください。

 三谷氏の作品はどれも長いが、これも長い。
 確認すると、138分もある。
 とは言え、その長さを感じさせないのはさすがである。
 三谷氏が、映画監督として、ひとつなにかスタイルを固めたというか、熟成度がぐっと増したというような、そんな印象を受けた作品であった。