べっちょない日々

作家の末席を汚しつつ、しぶとく居座る浅田靖丸のブログ

「劇場版SPEC〜結〜漸ノ篇 爻ノ篇」鑑賞


「劇場版SPEC〜結〜漸ノ篇 爻ノ篇」
監督 堤幸彦 脚本 西荻弓絵 出演 戸田恵梨香 加瀬亮 竜雷太 ほか


あらすじ
 警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係の刑事である当麻紗綾(戸田恵梨香)と瀬文焚流(加瀬亮)は、SPECと呼ばれる超能力者たちが引き起こすさまざまな事件に関わる中で、「御前会議」をはじめとして世界を裏で操るさまざまな秘密結社の存在を知る。彼らは当初、SPECホルダーをヒューマンリソースと考え、保護しようとしていたが、SPECホルダーの反乱が相次いだことから彼らを一掃する方向へと転換し、「シンプルプラン」という計画を立案、実行しようとする。「シンプルプラン」とは、インフルエンザウィルスにSPECホルダーだけを死亡に至らしめる因子を移植し、それを世界中にばらまくというものだった。
 日本に持ち込まれたウィルスをなんとか入手し、その製造者であるプロフェッサーJも倒した当麻と瀬文だったが、その闘いの中で上司である野々村係長代理が死亡し、当麻もウィルスに罹患してしまう。
 そんな中、地球の意志の代行者であるセカイ(向井理)が動き出す。
 セカイは地球を蝕む人間を滅ぼし、かつての「先住人」を復活させようと企んでいた。
 セカイによれば、現代の人間は他の惑星から偶然地球に流れ着いて寄生した外来種にすぎず、それ以前に地球に存在していた固有種こそが「先住人」であり、セカイもそのひとりであるという。
 当麻のSPECを利用し、「先住人」をこの世に呼び戻そうとするセカイたちと、それに命懸けの抵抗をする当麻と瀬文。果たして彼らの闘いの行く末は……。

 感想
 まずはじめに、あけましておめでとうございます。
 根っからの不精者のため、賀状を出すわけでもなく、SNSに書き込むことすらしなかったため、せめてここで年始の挨拶をさせていただきます。あけましておめでとうございます。大事なことだから二度言いましたよ。

 というわけで、「SPEC」である。(ころっと口調を変えるのである)
 前後編を立て続けに観たのである。
 すごい。
 面白い。
 が、あらすじに書いた以上のことは、ネタバレになるであろうため、もう書けない。(すでにかなりのネタバラしをしてしまっているような気もするが……)
 ストーリー展開の大風呂敷の広げ方も驚嘆に値するが、それに乗っかって白熱の演技を見せる俳優陣もすごい。馬鹿馬鹿しさとシリアスのすき間を縫って、随所に小ネタを挟みつつクライマックスまでがんがん突き進んでいくそのテンションの高さには、正直舌を巻く。
 CGのレベルもかなり高い。
 が、僅かに物足りなさがある。
 後編の中盤、セカイと当麻が、ある鉄塔の屋上で直接対決を始めるのだが、そうなってから、場所がそこに固定されてしまうのである。
 これがハリウッドとかの資金が潤沢にあるところなら、闘いの中で場所をどんどん変え、状況の描写をもっと壮大に演出したりするのであろうし、おそらく堤監督も本当はそうしたかったのではないか、それができなかったのは、やはり資金力不足が原因ではなかろうかと邪推する。
 正直、少し目が飽きる。
 もったいない。

 それにしても、堤幸彦監督の作品には、毎回、私の中二病の傷痕が、絶妙にくすぐられる。
 くすぐられすぎて、病が再発しそうになるほどである。
 勢い余って「ケイゾク」のDVDを全編借りて、年末年始にぶっ通しで観てしまったほどである。
 再発しそうというか、すでに再発してしまっている感じである。
 堤幸彦、恐るべしである。
 この一月には、別シリーズである「トリック」の完結編が上映されるらしいが、それも観に行かねばなるまい。

 前回の「SPEC天」の際には、「ケイゾク」も観ておいた方がいいと書いたが、それを少し訂正させてもらいたい。
 観た方がいい、のではなく、絶対観とけ、ということである。
 でないと、今作のラストのナレーションの意味が、さっぱり分からないであろうからである。
 もう、そここそが、私の中二病の傷痕をずきゅんとダメ押しで打ち抜かれた瞬間であったのである。
 あ、ずきゅんと打ち抜かれたと言えば、佐野元春である。
 彼は当麻の父親役で出演しているのだが、正直、演技は今イチであった。
 何故彼をキャスティングしたのだろう、なにか政治的な圧力でもかかったのか、それとも、先祖からお告げでもあったのか、あるいは単に監督がファンだからなのか。
 いずれにせよ解せぬ。
 と思っていたのだが、今作を観て解した。
 もう、解しに解した。
 そして泣きに泣いた。
 まんまと堤監督と西荻氏の術中にはめられてしまったようでちょっと悔しいが、それも嬉しい悔しさである。
 私も、中二病全開で行けばいいのかも知れない。
 開き直ってがんがん突き進めばいいのかも知れない。
 そんなことを思わせてくれた作品であった。