べっちょない日々

作家の末席を汚しつつ、しぶとく居座る浅田靖丸のブログ

ウンチク漫才

私 「どうもー。なんやかんや言うてやらせてもらっているんですけどもね」
相方「ちょっと聞いてくれる?」
私 「どないしたんや?」
相方「こないだ病院で検査してもうたらな、中性脂肪の値が高いなあって言われてしもて」
私 「それは困ったこっちゃな」
相方「せやねん。それでな、なんやエパデールっちゅう薬が中性脂肪を抑えてくれるらしいて聞いて、買ってみようかと思うてるんやけど、薬に頼るのもちょっと怖いなと思うてな。どうなんや? 君、そういうの詳しいやろ?」
私 「なるほど、エパデールな。脂肪異常症の治療薬や。昔は処方してもらわんと買われへんかったんやけど、今ではネットでも気軽に買えるんやから、すごい時代になったもんやな。で、そのエパデールやけどな、主な成分はEPAなんや。知ってるか? EPA
相方「EPA? なんやそれ、知らんわ」
私 「イコサペント酸言うてな、青魚にようさん含まれてるて話題になった成分やねんけど」
相方「青魚にようさん含まれてるんはDHAとかいうやつやなかったっけ?」
私 「おっ、よう知ってるな。そうや、DHAEPA、青魚にはそのどっちもが豊富に含まれてるんや。で、このEPAというやつが中性脂肪の合成を抑えたり血液をさらさらにして代謝を促進したりするわけやな」
相方「へー、すごいな。ということは、やっぱり服用したほうがええのか?」
私 「ところがや、薬やからやっぱり副作用がある」
相方「えっ、副作用?」
私 「そうや。エパデールの副作用には、腹痛とか下痢、発疹とか胸やけとかが多いみたいやな。ひどいときには、肝臓に障害が出たり、黄疸が出たりもするらしい。それに、血液をさらさらにするから、出血したらなかなか止まれへんようにもなるみたいやな」
相方「なんやそれ。めっちゃ怖いやんか」
私 「まあ、用法用量を守ってればそんなに怖いものではないんやけどな」
相方「なんや薬のCMみたいなセリフやな」
私 「EPAを摂るんなら、薬より食物からのほうがええかもな」
相方「やっぱり青魚か?」
私 「せや。サバとかサンマとかイワシとかやな。マグロとかカツオもええで」
相方「ほー。せやけど魚を毎日食べるのはちょっと大変やな」
私 「そもそもEPAとかDHAっちゅうのは、オメガ3系不飽和脂肪酸っちゅう必須脂肪酸に分類される栄養素でな、オリーブオイルとかエゴマ油とか亜麻仁油とかも含まれるんや」
相方「脂肪酸? 中性脂肪を取るのに脂肪を摂るのか、なんやけったいな話やな」
私 「脂肪っちゅうのはエネルギー源やからな。使われんと体ん中に溜まった状態があかんだけで、適量は体に必要なんや。で、その脂肪にも、ええ脂肪と悪い脂肪がある。不飽和脂肪酸がええ脂肪なら、飽和脂肪酸に分類されるのがあかん脂肪や」
相方「飽和脂肪酸?」
私 「バターとかマーガリン、ラード、肉の脂身とかやな。常温で固体のものが多いのが特徴や。不飽和脂肪酸は常温では液体のが多い」
相方「全部オレの好物やないか」
私 「せやから中性脂肪が溜まるんやないかい。これからは肉は控えて魚にせい。バターは止めてオリーブオイルや。ちなみに、EPAとかDHAは、朝に摂るのがもっとも効果的らしいで。焼き魚をメインにするとなると、やっぱり和食や。わかめのみそ汁に納豆に焼きサバ、和食は最高やな」
相方「和食もええけど、毎日やと飽きるかもな。というか、そこまで知ってるからには、お前は毎朝和食なんやろな?」
私 「いや、オレは朝はトーストにコーヒーだけやけど。トーストにはマーガリンべったり塗ってな」
相方「なんでやねん。和食にしろよ」
私 「面倒くさいやん。わかめ嫌いやし」
相方「お前、今一番言うたらあかんことを言うたぞ。健康のためには和食がええねやろ? それが分かっててなんでそうせえへんねん」
私 「あのな、オレみたいな怠け者であかんたれでひとさまに迷惑しかかけへん嫌われ者が、健康に気を遣って百歳まで生きたところで、なにか社会の役に立つと思うか?」
相方「……」
私 「悩むな! そこははっきり否定してくれよ。お前からオレを褒めるという機能がなくなったら、それこそなんの役に立つんや」
相方「ひとを壊れたパソコンみたいに言うなや」
私 「そんなこと言うたら壊れたパソコンに失礼やないか」
相方「えっ、オレ壊れたパソコンより下なの?」
私 「まあ、それ以上は傷つけるから言わんけど」
相方「言うてるのと一緒やぞ」
私 「食事の話に戻るけどな、食事っちゅうのは、なにを食べるかも大事やけど、食べるタイミングっちゅうのも大事なんや。毎日規則正しく同じ時間に食事をするというのが大切なんやな」
相方「なるほど。でも僕らみたいな仕事をしてると、毎日同じ時間に食事をするというのはちょっと難しいよな」
私 「せやな、不規則な仕事やからな。せやけどな、生活習慣病という言葉があるやろ。結局健康というもんは、毎日の生活の中で、いつなにを食べてるのか、体をどれくらい動かしているのかというようなことが、年齢とともにいずれ体に表れてくるで、ということやからな。せやから、薬飲んで一発でようなって欲しい、みたいな発想はせんほうがええで。あかん生活をしてるとあかん体になるし、ええ生活を心がけてると長生きできるんや。当たり前のことやけどな」
相方「ええこと言うたな。そうなると気になるから聞くけど、昨日の君の食生活はどんな感じやったんや?」
私 「オレか? 昨日は朝10時頃に起きて、マーガリンべったり塗ったトースト食べて、コーヒー飲んで、昼は2時過ぎやったかな、なんや腹減ったなあと思うてラーメン食べて、それから仕事行って終わったんが夜の11時くらいやったから、12時ごろに焼肉屋に行って肉をたらふく食べた」
相方「全然あかんやんけ。そんな生活してて、よう健康のことが口にできるな」
私 「せやから言うたやろ、オレみたいな男が長生きしても迷惑なだけやって」
相方「……」
私 「いやせやから、そこはすぐに否定せんかい。もうええわ」
相方「ありがとうございました」

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 いつだったか、友人の娘さんに「ウンチク野郎」という名誉ある称号をいただき、それがかなり悔しかった嬉しかった(いや嬉しかったというのも違うか)気に入ったので、ちょっと「ウンチク漫才」というのを考えてみたのだが……。
 やっぱり駄目だな。ウザったいばかりで面白くないな。このあたりが「ウンチクブタ野郎」の限界かも知れんな。本職の漫才師はやっぱりすごいというのを再確認。「ウンチククソ野郎」の名にかけて、もっと精進せねば。そうでないと、いつまで経っても「ウンチクばかり言いやがってうんざりなんだよこのハゲ野郎」の悪名から抜け出せないぞ、ってハゲって言うなよ。頭のことはいいだろうがよ。言っていいことと悪いことがあるんだぞホント。